• 車両リースバック

これだけは押さえたい貨物自動車運送事業法|運行管理・許可申請・罰則規定を徹底解説

トラックなどの貨物自動車を利用した運送事業には、許可申請や運行管理体制の整備、安全規制の遵守が義務付けられています。

本記事では、貨物自動車運送事業法の基本や、一般貨物自動車運送事業・特定貨物自動車運送事業・貨物軽自動車運送事業の違い、申請時に必要な書類・手続き、安全規制や罰則など、運送業を営む上で欠かせないポイントを解説します。

貨物自動車運送事業法とは

貨物自動車運送事業法は、トラックなどの貨物自動車を使用して行う貨物自動車運送事業を正しく運営することを目的に制定された法律です。

ここでいう貨物の運送とは、荷物を受け取り、目的地へ運ぶ業務を指します。

事業者は、国土交通省の定める手続きにのっとり許可を取得し、安全かつ適正な運営を行わなければなりません。

同法は、業界の適正化や荷主との契約関係、事故防止策の実施など、幅広い範囲をカバーしています。

また、道路運送車両法や貨物運送取扱事業法、貨物利用運送事業法といった関連法令とともに、業界の適正なルール作りに寄与している点も特徴です。

さらに、重大な違反があった場合には運輸審議会で審議され、許可取り消しや罰金などの処分が科される内容も含まれています。

貨物自動車運送事業法は、事業の規模や内容によって一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業、貨物軽自動車運送事業の3つの区分に分類されています。

まずは、3つの区分の違いについて解説します。

一般貨物自動車運送事業

一般貨物自動車運送事業は、複数の荷主の貨物を有償で運ぶ事業形態であり、もっともオーソドックスな形態といえます。

自社以外の複数の荷主から運賃をもらって貨物を運ぶ事業を開始するには、まず国土交通大臣の許可を得なければなりません。

一般貨物自動車運送事業では、車両数や営業所の施設要件などが具体的に定められ、専従の運行管理者の配置や、運転者の休息・勤務体制の確保など、安全対策の徹底が不可欠です。

この一般貨物自動車運送事業の許可を取得すれば、さまざまな企業や個人の荷主から貨物の輸送依頼を受けることができます。

一方、事業者の増加により競争が激化しており、許可要件だけでなく、運賃やサービスの質、社会的信用力などを向上させる努力が求められます。

【一般貨物自動車運送事業の主な要件】

  • 人的要件

申請者や会社役員が懲役または禁錮の刑に処されたなどの欠格事由に該当していないこと、法令試験に合格していることなど

  • 物的要件

建物が都市計画法や建築基準法、農地法などの法令に抵触していない営業所を構えていること、休憩・睡眠施設があること、営業所に併設または一定の距離内に、全車両を収容できる車庫があることなど

  • 財産的要件

人件費や燃料費など、事業に必要な運転資金が一定期間分確保できていること、損害保険に加入し、損害賠償能力があることなど

特定貨物自動車運送事業

特定貨物自動車運送事業は、特定の荷主が所有または管理する貨物を継続的に運送する形態です。

例えば、メーカーや商社など、特定の1社の荷物だけを系列会社が運ぶといった例が該当し、一般の配送依頼を広く受けるわけではありません。

一般貨物自動車運送事業と比べて荷主が限定されるため、規模が比較的小さくなるケースもありますが、許可を得る際には同様に安全確保や運行管理体制の確立が求められます。

許可申請の際の審査項目も、一般貨物自動車運送事業と同様です。

特定貨物自動車運送事業は、特定の顧客に対して安定的にサービスを提供できる利点がある一方、契約解除や業務縮小などが起こると収益源が大きく損なわれるリスクがあります。

また、道路交通法や道路運送車両法などの関連法律を含め、遵守する義務がある点は一般貨物自動車運送事業と変わりません。

将来的に他社の荷主の荷物も運ぶ可能性がある場合は、特定貨物自動車運送事業を廃止した上で、改めて一般貨物自動車運送事業の許可申請手続きが必要です。

そのため、今後ほかの荷主からの依頼も見込むのであれば、最初から一般貨物自動車運送事業で申請したほうが効率的です。

貨物軽自動車運送事業

貨物軽自動車運送事業(軽貨物運送事業)とは、軽自動車や二輪車(バイク)などを利用して、不特定多数の荷主から依頼を受け、小口の貨物を運送する事業形態です。

いわゆる「軽貨物」「黒ナンバー」と呼ばれるもので、近年ではネット通販の需要増加に伴いフリーランスドライバーによるサービスが注目を集めています。

軽自動車を使った運送は初期投資や維持費が抑えられる点が利点ですが、一定の要件を満たし、運輸支局への届出が必要です。

一般貨物自動車運送事業や特定貨物自動車運送事業のように許可制の場合、審査に3~4カ月かかることがありますが、貨物軽自動車運送事業の場合は届出制のため、基本的に審査期間がなく、すぐに事業を始められます。

ただし、事業者としての責任は一般・特定貨物自動車運送事業と同様に求められ、運送約款の作成や安全運行に関する管理体制の整備が欠かせません。

さらに、安易に低価格で運賃設定を行ったり、過度の無理なスケジュールで稼働したりすると、法令違反やドライバーの過労につながる可能性があります。

結果として行政処分や刑事罰(罰金刑など)が科されることもあるため注意が必要です。

小規模ならではの柔軟性を生かしつつ、法定要件を遵守し、安全管理を怠らない姿勢が貨物軽自動車運送事業の安定した経営につながります。

一般貨物自動車運送事業の許可申請

一般貨物自動車運送事業許可の申請では、法人・個人別の必要書類や車両関連資料に加え、場合によっては追加書類の提出が求められます。

運行管理体制の整備としては、運行管理規定の作成・点呼・アルコールチェック、安全教育の実施などが重視され、車両の日常・定期点検やデジタコの活用も必要です。

審査で不備があると事業開始が遅れるおそれもあるため、事前に管轄の運輸支局に必要となる書類や項目について確認しておきましょう。

スムーズに許可申請を進めたいときは、行政書士などの専門家に依頼するのもおすすめです。

運行管理体制の整備

一般貨物自動車運送事業許可には、運行管理体制(安全管理体制)の整備が重視されます。運行管理規定の作成・周知、始業・終業点呼、アルコールチェック、日報などの一定期間の保管、事故時の報告手順や再発防止策、安全教育などの実施も求められます。

また、車両の日常・定期点検やデジタコ(デジタル式運行記録計)の活用など、事故防止のための取り組みも重要です。

貨物利用運送事業法や貨物運送取扱事業法など、他法令との整合性を保ちつつ、定期的に運行計画を見直すことで、ドライバーの過労防止にもつながります。

適切な運行管理体制は、事業の信頼性向上とコンプライアンスの強化に欠かせません。

法令で定められた遵守事項

貨物自動車運送事業法のもとでは、運行管理者の選任や、ドライバーの労務管理、貨物自動車の点検整備、事業報告書の提出など多岐にわたる遵守事項が定められています。

守らない場合、罰金刑や許可取消といった処分が下されるリスクがあるため、対応可能な体制づくりを行いましょう。

運行管理者の選任

貨物自動車運送事業法では、運行管理者の選任が義務付けられています。

選任される運行管理者は、国土交通省が実施する試験に合格し、必要な講習を受講することで正式に資格取得した国家資格者です。

保有車両数や事業所の規模に応じて選任は義務化されており、事業開始時や事業規模時に適切なタイミングで行わなければなりません。

運行管理者は、ドライバーの健康状態やシフト管理、運行計画の策定などを通じて安全運行を支える役割を担っています。

さらに、事故やトラブルが発生した場合の原因追究・再発防止策の検討にも深く関わり、事業者全体のコンプライアンス向上と社会的信頼の維持に大きく寄与する存在です。

加えて、運行記録の保存やドライバーへの安全教育の実施など、法令遵守のための各種業務も携わり、輸送品質の向上と利用者の安心・安全の確保が求められています。

運転者の労務管理

運転者の労務管理は、貨物自動車運送事業法の遵守事項の中でも特に重要視されており、過労運転を防ぐための適切な勤務時間設定や休憩・休息の確保が求められています。

具体的には、出勤前後の点呼での健康状態確認やアルコールチェック、乗務割当の際の過度な運転時間の防止などが挙げられます。

運転者が疲労困ぱいの状態で業務に当たることは、重大事故や法令違反を誘発しかねず、社会的信用の失墜や行政処分につながるおそれもあります。

乗務計画を無理のないスケジュールで策定し、気象条件や交通状況にも配慮することが重要です。

事業者は労働基準法も踏まえつつ、ドライバーの安全と健康を最優先に管理する体制を整備しなければなりません。

車両の点検整備

貨物自動車運送事業法においては、事業用車両に対し日常点検や定期点検を的確に実施し、整備不良を放置しないことが求められています。

トラックは長時間・長距離の運行が多いため、ブレーキやタイヤなどの消耗部品を交換し、常に整備状態を把握することが事故防止につながります。

整備管理者を選任する場合は、車両の状態を常に把握し、点検記録簿を作成・保管する体制を確立しなければなりません。

もし整備不良車を運行させて事故や違反が発生すれば、厳しい行政処分を受ける可能性があります。

日頃からのメンテナンスが重要です。

事業報告書の提出

貨物自動車運送事業法では、トラック運送事業者は毎事業年度ごとに事業報告書の提出が義務付けられています。

具体的には、営業収入や輸送実績、車両数、従業員数などを取りまとめ、所轄の地方運輸局へ提出しなければなりません。

提出期限は事業年度が終了した後、一定期間内(通常、年度末後の数カ月以内)に定められており、正確かつ漏れなく作成することが求められます。

この報告書は、行政が事業者の運営状況を把握し、安全対策や運行管理体制などが適切に機能しているかを監督するために利用されます。

安全規制と罰則規定

貨物自動車運送事業法では、過積載や過労運転を禁止し、運転時間や休息時間を厳格に規定しています。

違反が確認されると、事業停止や許可取消などの行政処分を受ける可能性があります。

行政処分を受けると、金融機関や投資家からの信用低下により資金調達が困難になるおそれがあるほか、取引先・荷主との取引にも影響するなど、資金繰りの悪化を引き起こす可能性があるため、極力回避しなければなりません。

過積載の禁止と罰則

貨物自動車運送事業法では、過積載を安全上の重大な違反行為と位置づけ、厳しく規制しています。

過積載は車両の制動力やハンドリングを著しく低下させ、重大事故を引き起こす要因となるだけでなく、道路インフラの損傷も大きいとされるためです。

事業者や運転者が最大積載量を超えて貨物を積載した場合、行政処分や罰則を科される可能性があります。

具体的には、過積載の事実が確認されると、違反点数の付加や罰金、違反状況が悪質な場合には事業停止処分といった厳しい処分が下されることもあるでしょう。

また、事業者には運行管理体制の不備が問われ、再発防止策の徹底や安全教育の強化を求められるケースも少なくありません。

過積載の禁止は輸送の安全と社会インフラの保全に直結するため、事業者および運転者は法令を順守し、適正な積載と安全運行を実施することが強く求められています。

運転時間制限と休息期間

貨物自動車運送事業法および関連法令では、過労運転防止を目的として運転時間の制限と休息期間の確保が規定されています。

具体的には、一日の運転や拘束時間に上限が設けられ、連続運転時間を一定時間内に収めることや、所定の休息を挟むことが求められます。

例えば、一日における拘束時間は原則13時間以内とされ、週あたり2回までは16時間まで延長が認められる一方、連続運転は4時間を超えてはなりません。

また、終業から始業までに最低8時間の休息を与える必要があるなど、運転者の疲労を軽減する措置も定められています。

違反への行政処分

貨物自動車運送事業法では、安全かつ適正な貨物輸送を確保するために事業者の遵守事項が定められており、これらに違反した場合には国土交通大臣や地方運輸局長による行政処分が下されます。

行政処分には、事業許可の取消や事業停止、警告、業務改善命令などが含まれており、違反の内容や回数、事後措置の状況などを総合的に考慮して判断されます。

さらに、処分に至る過程では行政庁による監査が実施され、違反の有無や改善の必要性が調査される仕組みです。

聴聞の機会も与えられるため、事業者は自身の立場を主張し、弁明を行うことができます。

ただし、安全確保を妨げるような悪質な違反が確認された場合には厳しい処分が下される傾向があり、その結果、荷主との取引や社会的信用が大きく損なわれるおそれもあります。

行政処分が資金調達に及ぼす影響

貨物自動車運送事業法に違反をして行政処分を受けると、資金調達にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

以下に主な事例を紹介します。

金融機関からの融資が受けにくくなる

金融機関はコンプライアンス(法令遵守)や社会的信用を厳しく見極めるため、行政処分を受けると、コンプライアンスへの疑念が生じ、追加書類や改善計画の提出を求められるなど、融資が難しくなる場合があります。

仮に融資が認められても、金利面で不利な条件を提示されるなど、資金繰りに影響を与えるおそれがあります。

社債発行が難しくなる

行政処分を受けると、社債発行時に投資家や証券会社からの信用が著しく低下し、引き受け手を確保しにくくなります。

格付けが悪化すれば高金利での設定が必要になるほか、償還期限の短縮や早期償還条項の追加など不利な条件が課され、資金調達の柔軟性が損なわれるおそれがあります。

取引先・荷主からの信用失墜

行政処分を受けた事業者との取引を敬遠する取引先や荷主も少なくありません。

特に大手企業や公共事業に関わる案件では、コンプライアンスが重視される傾向が強いため、契約解除や新規取引の減少につながるおそれがあります。

結果として売上が減少し、資金繰りをひっ迫させる要因にもなり得ます。

まとめ

貨物自動車運送事業法は、安全運行管理や運転時間制限、過積載防止などを厳格に定めており、違反すれば行政処分や資金調達への悪影響、取引先からの信用失墜を招きます。

運行管理者の選任や労務管理などを徹底し、最新の法令情報を把握して適切に対応しましょう。

違反は事業の存続にも直結し、事業継続を脅かす原因となり得るため、十分な注意が必要です。

ディスクリプション

トラック運送業の許可申請と法令遵守を解説。一般・特定・軽貨物の区分、運行管理体制の整備、運転者の労務管理など必須知識も紹介。違反による行政処分は資金調達や取引にも影響。経営者必見の貨物自動車運送事業法の完全解説。

TOP お役立ちコラム これだけは押さえたい貨物自動車運送事業法|運行管理・許可申請・罰則規定を徹底解説

Contact

日本の物流企業の経営者の方々にしっかり寄り添います。
ぜひお気軽にご相談ください。