トラック運転手の給料事情|稼ぎ方と将来性を徹底解説

トラック運転手への転職・就職を考える皆さま、あるいは従業員の給与体系を見直したい経営者の皆さまにとって、給料は最大の関心事ではないでしょうか。
体力的な負担や長時間労働のイメージがある中で、「実際どれくらい稼げるのか?」「どうすれば給料を上げられるのか?」という疑問は尽きません。
この記事では、公益社団法人 全日本トラック協会(JTA)のデータに基づき、トラック運転手の平均年収・月収の全国平均、職種別、年齢別、地域別の現状を解説します。
給与を構成する基本給、手当、歩合制の仕組みから、高収入を実現するための具体的な方法まで、運送業の稼ぎ方に関する情報を詳しくご紹介します。
トラック運転手の平均年収・月収の現状
トラック運転手の平均年収・月収は、運転する車両の種類(大型、中型、軽貨物など)、走行距離(長距離、地場)、勤務地、そして企業の規模や給与体系によって大きく変動します。
運送業の仕事は、日本の物流を支える重要性の高い職種でありながら、労働時間や環境に対する法改正(いわゆる「2024年問題」)への対応が喫緊の課題となっており、これに伴い給与水準にも変化が生じつつあります。
ここでは、「公益社団法人 全日本トラック協会」のデータに基づき、平均給料水準と、具体的な条件による給料差の現状を詳しく見ていきましょう。
全国平均の年収・月収
公益社団法人 全日本トラック協会(JTA)の「2024年度版 トラック輸送事業の賃金・労働時間等の実態」によると、トラック運転手全体の賞与を含む平均的な給与水準は、男性運転者で404,100円、年収換算で約485万円、女性運転者で329,100円、年収換算で約395万円です。
国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、賞与を含む平均年収は男性が約569万円、女性が約316万円なので、男性にとってはやや低い水準に、女性にとっては魅力的に見えるかもしれません。
また、大型やけん引といった職種になると、この平均値を大きく上回ります。
【主な職種別の平均賃金(男性)】
1ヶ月平均賃金 1ヶ月平均賃金(賞与込み) 賞与込みの場合の年収の目安
けん引運転者 404,200円 460,800円 約553万円
大型運転者 379,600円 420,200円 約504万円
中型運転者 322,700円 356,300円 約427万円
男性運転者平均 360,300円 404,100円 約485万円
【主な職種別の平均賃金(女性)】
1ヶ月平均賃金 1ヶ月平均賃金(賞与込み) 賞与込みの場合の年収の目安
けん引運転者 361,400円 399,000円 約479万円
大型運転者 327,400円 358,900円 約431万円
中型運転者 283,400円 310,700円 約373万円
男性運転者平均 299,200円 329,100円 約395万円
出典:公益社団法人 全日本トラック協会(JTA)の「2024年度版 トラック輸送事業の賃金・労働時間等の実態
このデータから、けん引運転者や大型トラック運転手の平均年収は全トラック運転者平均を上回る水準にあることが分かります。
なお、ここで示される月収には、基本給のほか、残業手当、深夜手当、各種運行手当などが含まれており、特に残業や深夜運行が多い職場では、この手当部分が平均値を押し上げている側面があることを理解しておく必要があります。
また、女性運転者の給与は男性に比べて低い傾向にありますが、これは中型以下の地場配送を担うケースが多いことが背景にあります。
ドライバーにとって、この全国平均は自身の目指す収入の指標となります。経営者にとっては、自社の給与水準が業界平均と比較して妥当であるか、あるいは人材を惹きつけるための競争力があるかを判断するための材料となります。
年齢別/キャリア別の違い
トラック運転手の給料は、経験年数や年齢によって増加する傾向にありますが、運送業界特有の事情として、「若くても稼げる」「ベテランでも高い価値を発揮できる」という側面があります。
年齢層( 1ヶ月平均賃金(賞与込み) 20代との給料指数 ポイント
20~29歳 356,500円 100.0 免許と意欲次第で、全産業の20代平均を上回る収入をすぐに得ることが可能。体力があり、長距離・夜間運行で年収アップも可能。
30~39歳 398,000円 111.6 技術、ノウハウ、安全運転実績の積み重ねにより、最も高い給与水準に。管理職へのキャリアアップも期待できる。
40~49歳(給料ピーク) 422,300円 118.5
50~59歳 420,600円 118.0 長年の無事故・無違反の実績が高く評価される。役職手当や指導手当を得て、給料ピーク水準をほぼ維持できる。
※出典:公益社団法人 全日本トラック協会(JTA)の「2024年度版 トラック輸送事業の賃金・労働時間等の実態
キャリアをスタートさせたばかりの20代の運転手であっても、大型免許を取得し、バリバリと長距離輸送に挑戦することで、すぐに平均以上の収入を得ることが可能です。特に、体力が充実している20代は、深夜・長距離運行といった高収入に直結する業務をこなしやすく、「20代でも年収450万円から550万円を稼げる」という職場も珍しくありません。
経験だけでなく、「免許と意欲」が給料に直結する運送業の大きな魅力といえるでしょう。
30代から40代は、トラック運転手として最も安定し、高い給与を得やすい年代です。この年代になると、運転技術、ルート選択のノウハウ、荷物の積み降ろしの効率など、経験に裏打ちされたスキルが確立されており、多くの場合、企業の中核ドライバーとして活躍します。
そして、50代以上のベテラン運転手も、運送業界では高い価値を持っています。体力的な負担を考慮して、長距離から地場配送やルート配送に切り替える人もいますが、長年の経験から培われた無事故・無違反の運転実績は、会社にとってかけがえのない財産です。
若い頃のような高額な残業代は見込めなくなるかもしれませんが、「50代でも安定したルートで活躍できる」高いニーズがあります。
また、若手への指導役や、企業の安全運行管理の要として、役職手当を得て給料を維持・向上させるケースも多く、その経験と人柄が高く評価されれば、安定した収入を確保できるのがこの年代の特徴です。
都道府県別・都市部 VS 地方の給料差
勤務する地域によっても、トラック運転手の報酬に大きな差が生じます。これは、地域ごとの物価水準、企業の集中度、そして輸送需要の多寡が影響し合っているためです。
一般的に、都市部、特に三大都市圏(関東、中部、近畿)は、地方に比べて給料水準が高くなる傾向にあります。
【運転者のブロック別平均賃金(男性)】
地域区分 1ヶ月平均賃金(手当込) 全国平均(360,300円)との差 地域差の要因
関東 374,700円 +14,400円 大企業の集中、物価の高さ、輸送需要の集中
近畿 364,100円 +3,800円 地方のハブ機能、工業地帯の輸送需要
東北 302,100円 -58,200円 物価の低さ、輸送需要の分散
沖縄 262,300円 -98,000円 離島輸送、物流規模が相対的に小さい
※出典:公益社団法人 全日本トラック協会(JTA)の「2024年度版 トラック輸送事業の賃金・労働時間等の実態
地域で給料差が生まれる主な理由としては、輸送需要の集中と物価の高さが挙げられます。
関東や近畿などの大都市圏は、消費地・生産地が集中しているため、荷物量が圧倒的に多く、それに対応するためのトラック運転手の需要も高くなります。
需要が高い地域では、人材を確保するために賃金競争が起こりやすく、結果として給料水準が押し上げられます。また、都市部は、家賃やその他の生活費が高いため、それを補填する形で基本給や地域手当が高く設定される傾向にあります。
一方で、地方は、都市部に比べて平均的に低い傾向がありますが、一概に稼げないわけではありません。地方では、生活費(特に家賃)が安く抑えられるという大きなメリットがあり、手取り額に対する実質的な購買力は都市部と大差ない、あるいはそれ以上になるケースもあります。
ドライバーは、単に給料の額面だけでなく、生活費とのバランスや、希望する勤務形態(地場か長距離か)を考慮に入れて、就職先を選ぶ必要があります。経営者の方々は、自社の所在地における競合他社の給与水準を正確に把握し、地域特性を踏まえた上で、採用戦略や給与体系の整備を進めることが、優秀な人材の確保に繋がります。
物流業界の働き方改革の影響
物流業界における働き方改革は、主に2024年問題として知られる、2024年4月1日からの改善基準告示改正に集約されます。この改革は、給料の構造と水準に根本的な影響を与えています。
この改革による給料への主要な変化として、まず長時間労働による高収入モデルの崩壊が挙げられます。年間の拘束時間上限が3,516時間から3,300時間に、1日の休息期間が原則8時間から11時間に延長された結果、ドライバーが残業や休日出勤を増やして稼ぐという従来のモデルは機能しなくなり、特に残業代や深夜手当に頼っていたドライバーの月収は一時的に減少する事態が発生しています。
次に、運賃交渉と生産性向上の圧力が高まります。労働時間の短縮に伴い、運送会社は運賃の値上げを荷主に対して交渉することが必須となり、適正運賃に基づいた運送が実現すれば、ドライバーへの基本給のベースアップや運行手当の増額という形で、適正な給料を確保しやすくなります。
最後に、輸送能力の深刻な不足が、今後の賃金上昇を後押しします。労働時間規制により、2024年度には輸送能力が約14%、2030年度には約34%不足するという国土交通省の予測があり、この深刻な人手不足がドライバーの賃金上昇圧力を高める最大の要因となります。
トラック運転手は、今後、長時間労働ではなく、効率の良さと安全性で評価され、給料が決定される時代に入ります。企業は、ITを活用した配車計画の最適化や、付帯業務の分離といった生産性向上の取り組みを進め、法令遵守と給料維持・向上を両立させることが求められます。
人手不足・賃金上昇圧の見込まれる地域・業種
トラック運転手の給料は、業界全体で深刻化している人手不足を背景に、今後、賃金の上昇圧力が強まると予測されています。特に人材確保が難航している分野では、給料水準を引き上げざるを得ない状況にあります。
・賃金上昇が見込まれる地域と業種
長距離輸送ドライバー、特に、三大都市圏(関東、中部、近畿)は物流需要が高い一方、ドライバーの確保が困難です。拘束時間が長く敬遠されがちな長距離輸送は人手不足が深刻で、大型免許・けん引免許を持つドライバーの賃金は今後も高水準で推移すると見込まれます。
・特定の専門性の高い輸送
危険物(ガソリン、高圧ガスなど)や、厳格な管理が必要な冷蔵・冷凍輸送は、特別な資格と高度な技術が求められるため、ドライバーの供給が少なく、常に人手不足です。これらの分野では、特殊な資格手当や高い基本給が継続的に設定されるでしょう。
・地方の中小企業
地方の中小運送業者は、大手との賃金競争力が低く、人手不足が深刻です。優秀な人材の流出を防ぐため、地域平均を超えた賃上げに踏み切らざるを得ない企業が増加すると予測されます。
安定した高収入を目指すなら、人手不足が顕著な「長距離輸送」や「特殊輸送」の資格を取得し、需要の高い都市部の優良企業で働くことも検討してみましょう。
まとめ
トラック運転手の給料は、資格や職種、勤務形態によって大きく変動します。最新データでは、けん引運転者で年収553万円、大型運転者で504万円と高収入が可能です。特に大型免許やけん引免許の取得は、給料アップの最も確実な武器となります。
2024年問題による労働時間短縮で、残業で稼ぐモデルは崩壊しました。
しかし、これは同時に運送業界の体質改善を促しています。今後は、長時間労働ではなく効率と安全性で評価される時代へと移行しています。さらに、深刻な人手不足がドライバーの賃金上昇圧力を高める結果となりました。この傾向は、今後も続くでしょう。
ドライバーは、給与体系が透明で法令を遵守した優良企業を慎重に選び、健康管理を徹底することが、高収入と安定したキャリアを築くうえで重要になります。