【運送業者必見】10トントラック完全ガイド:基本知識から選び方・コストまで徹底解説

運送業を営む上で、効率的な物流を実現するために適切なトラック選びは非常に重要です。中でも、大量の荷物を一度に運搬できる10tトラック(以降、10トントラック)は、幹線輸送や拠点間輸送において中心的な役割を果たしています。しかし、大型であるゆえに、その導入や運用には様々な側面から検討が必要です。
この記事では、運送業に携わる皆様が10トントラックの導入を検討される際に役立つよう、その基本的な知識から、購入・運用にかかるコスト、さらには運用・管理上のポイントまでを網羅的に解説します。
10トントラックの基本知識
10トントラックは、高い積載能力を備えているため、大量輸送が求められる物流現場で重宝される大型車両です。
また、活用範囲は建設資材や産業廃棄物の運搬にとどまらず、食品や雑貨などの配送にも幅広く対応可能です。さらに車種や荷台タイプが豊富に用意されており、自社の運搬形態に合った仕様を選びやすいことが大きな魅力となります。
ここでは10トントラックのサイズや特徴、他のトラックとの違いについて解説します。
10トントラックのサイズと特徴
10トントラックは、一般的に最大積載量が10トンクラスの大型トラックを指す通称として広く使われています。
道路運送車両の保安基準では、車両総重量が11トン以上、最大積載量が6.5トン以上の車両を大型トラックと定めており、10トントラックもこの大型トラックに区分されます。実際の最大積載量は、車種や荷台の構造によって異なり、必ずしも10トンぴったりとは限りません。
このクラスのトラックは、一度に大量の貨物を輸送できる点が大きな特徴です。
車両総重量が20トンを超えるものも多く、建設資材や産業廃棄物のような重量物を一度に運ぶことが可能です。
平ボディ、ウイングボディ、バン型、ダンプなど、様々な形状の荷台が存在し、それぞれ用途が異なります。
車種としては、三菱ふそうの「スーパーグレート」や日野自動車の「プロフィア」、UDトラックスの「クオン」などが代表例です。
日本の国内物流は、その約9割をトラック輸送が担っておりますが、近年はドライバー不足が課題となっています。そのため、一度に多くの荷物を運べる10トントラックの需要は今後も高まる傾向が見込まれています。
長距離輸送や大量の荷物運搬で積載能力を最大限に活かし、国内の物流を支える重要な役割を担う存在といえるでしょう。
10トントラックの最大積載量と車両総重量の求め方
10トントラックにおける「最大積載量」とは、そのトラックが安全に積める荷物の最大の重さを指しています。この最大積載量は、車両の構造や用途によって異なり、計算式を用いて求められます。
最大積載量を計算する際に、主に以下の要素が必要です。
・車両総重量: 荷物や乗車定員を含めた、車両全体の重さ。
・車両重量: 燃料やオイル、冷却水など、車両が走行するために必要なものが全て積まれた状態での、車両そのものの重さ。クレーンなどの架装品の重さも含まれます。
・乗車定員: 乗車する人の重さは、一人あたり55kgとして計算。
これらの要素を用いて、最大積載量は以下の計算式で求められます。
最大積載量 = 車両総重量 − 車両重量 − (乗車定員 × 55kg) |
一方で、「車両総重量」は、車両重量に最大積載量と乗車定員分の重さを加えたもので、以下の計算式で求められます。
車両総重量 = 車両重量 + (乗車定員 × 55kg) + 最大積載量 |
例えば、車両総重量が20トン、車両重量が9トン、乗車定員が2名(110kg)のトラックの場合、最大積載量は10.89トンとなります。これらの計算式を理解することは、過積載を防ぎ、安全な運行を行う上で非常に重要です。
10トントラックの種類と用途
10トントラックには、荷台の形状や機能によって多彩な種類があり、それぞれ得意とする輸送物や用途が異なります。主な車種とその用途は以下のとおりです。
最も基本的な形状としては平ボディが挙げられます。荷台がフラットで、側面にアオリと呼ばれる囲いが設けられた構造が特徴です。
次に、側面が鳥の翼のように大きく開くウイング型(ウイングボディ)があります。荷室全体を雨風から守りつつ、側面からも効率的に積み下ろしができます。
荷室が完全に密閉された箱型のバン型(ドライバン)も存在します。雨や埃から荷物をしっかり保護できるため、食品や衣料品、精密機器などデリケートな荷物の輸送に重宝されるタイプです。
土砂や砂利、産業廃棄物などを運搬し、荷台を傾けて一気に排出できるのがダンプ型(ダンプカー)です。建設現場では欠かせない車両といえ、その頑丈な車体によって大量の土砂運搬にも耐えられます。
他にも、液体を運ぶタンクローリーや粉粒体を運ぶバルクローリー、コンクリートを攪拌しながら輸送するミキサー車、自動車を運ぶキャリアカー、塵芥を収集・運搬する塵芥車(パッカー車とも呼ばれます)、重機などを載せるセルフローダーや低床ローダーなど、多様な特殊車両が10トントラックをベースに作られています。
10トントラックと他のトラックとの違い
トラックは、その最大積載量や車両総重量によって、いくつかの区分に分けられています。さらに、牽引車として活躍するトレーラーなど、特殊なカテゴリも存在します。
10トントラックは「大型自動車」に分類されますが、それ以外にも「中型自動車」や「準中型自動車」、「普通自動車」といった区分があり、それぞれの区分で、運転に必要な免許や車両のサイズ、積載量に違いがあります。
ここでは、10トントラック(大型トラック)と、運送業で一般的に使用されることの多いトラックとの主な違いを図表で比較してみましょう。以下は、道路交通法によるトラックの分類です。
【道路交通法によるトラックの分類※1※2】
区分 |
車両総重量目安 |
最大積載量目安 |
運転に必要な免許(一般的なケース) |
全長目安 |
主な用途 |
大型自動車 |
11トン以上 |
6.5トン以上 |
大型自動車免許 |
約9m ~ 12m |
長距離輸送、大量輸送、幹線輸送 |
中型自動車 |
7.5トン以上 11トン未満 |
4.5トン以上 6.5トン未満 |
中型自動車免許(8トン限定なし) |
約7m ~ 9m |
中距離輸送、ルート配送、地域内配送 |
準中型自動車 |
3.5トン以上 7.5トン未満 |
2トン以上 4.5トン未満 |
準中型自動車免許 |
約4.7m ~ 7m |
小口配送、コンビニ配送など |
普通自動車 |
~ 3.5トン未満 |
~ 2トン未満 |
普通自動車免許 |
~ 約4.7m |
個人宅配送、狭い場所への配送など |
※1上記の数値は目安であり、車両構造によって異なります。
※2上記免許区分は平成29年3月12日以降に取得した際のものであり、取得時期によって条件が異なります(例:平成19年6月1日以前に普通免許を取得した場合は8トン限定中型免許など)。
また、道路運送車両の保安基準では以下のように分類されます。
分類 |
寸法(全長×全幅×全高) |
車両総重量 |
最大積載量 |
小型トラック |
4.7m以内×1.7m以内×2.0m以内 |
5t未満 |
3t未満 |
中型トラック |
12m以内×2.5m以内×3.8m以内 |
5以上11t未満 |
6.5t未満 |
大型トラック |
11t以上 |
6.5t以上 |
道路運送車両法は、車の構造面から環境整備のための保安基準などを定めた法律です。これに対し、道路交通法はドライバーと歩行者が共存できる安全な車社会を作るための具体的なルールを定めています。
このように、トラックの分類は法律によって視点が異なるため、車両総重量や最大積載量が異なり、少し混乱するかもしれません。しかし、トラックのサイズにはこのような多様な捉え方があることを理解しておくことも大切です。
10トントラックを選ぶ際のポイント
10トントラックの購入は高額な投資となるため、自社の運送業務に合ったタイプを選ぶことが大切です。車両選びは、車両の性能、荷台のタイプ、維持コストなど、様々な側面から検討する必要があります。ここでは、10トントラックを選ぶ際に特に注意すべきポイントを解説いたします。
荷台タイプ別の特徴と選び方
前述したように、10トントラックには様々な荷台タイプがあり、それぞれに異なる特徴と得意とする用途があります。自社が主にどのような荷物を運び、どのような方法で積み下ろしを行うかなどを考慮して、最適な荷台タイプを選ぶことが最初の重要なステップです。
平ボディ(平床)タイプ
平ボディは、トラックの荷台構造の中で最もシンプルかつ汎用性の高いタイプです。荷台がフラットで、四方にアオリと呼ばれる側板が付いています。このアオリも開閉や取り外しが可能です。
特徴としては、まず荷台の四方が開放されているため、様々な形状やサイズの荷物を比較的自由に積める点が挙げられます。天井がないため、背の高い荷物も積載が可能です。
また、クレーンを使った上からの積み下ろし作業が容易に行えることも大きなメリットです。ただし、荷物を雨風から守るにはシート掛けが必要となり、荷物の固定には別途ロープやラッシングベルトなどの固縛資材が不可欠となります。荷物の種類によっては、輸送中に落下したり、破損したりしないよう、十分な固定対策が求められます。
向いている業種・用途としては、主に建設業界での資材運搬が挙げられます。鉄骨や木材、パイプなど、定型ではない長尺物や重量物の輸送に適しています。また、フォークリフトでの積み下ろしが難しい大型の機械設備などの輸送にも利用されることがあります。パレット積みの荷物も運搬できますが、雨対策や飛散防止には注意が必要です。
平ボディを選ぶ際のポイントとしては、まず積載する荷物のサイズに合わせて荷台の長さと幅を確認することが重要です。
一般的な10トントラックの平ボディは、荷台長が約6.2メートル、幅が約2.3メートル程度ですが、より長いものや特殊な幅のものもあるため、運搬する荷物の最大サイズを考慮しなければなりません。
次に、荷台の耐荷重性能も確認しましょう。運ぶ荷物の重さに耐えられる構造であるかを確認することが安全な運行につながります。
さらに、アオリの高さや開閉方式も運用に合わせて検討すると良いでしょう。例えば、頻繁に側方から積み下ろしを行う場合は、アオリの開閉が容易なタイプが便利です。
パワーゲート(テールリフト)を装備することで、荷物の積み下ろし作業の効率を向上させることも可能です。
ウイング型(ウイングボディ)
ウイング型は、トラックの荷台側面に備えられたウイングパネルが油圧や電動で大きく跳ね上がる構造を持つタイプです。荷室全体を密閉できるため、荷物を雨や風、埃からしっかりと保護できるのが特徴です。
このタイプの大きな特徴は、側面が大きく開閉することで、荷室のほぼ全体にアクセスできる点です。これにより、フォークリフトを使ったパレット単位での積み下ろし作業が効率的に行えます。
雨天時でも荷室を開けたまま作業ができるため、天候に左右されずに積み下ろしを進めることが可能です。また、荷室を閉鎖すれば、荷物の視認性が低くなり、盗難のリスクを軽減できるといった防犯性にも優れています。保管性と作業性を高いレベルで両立しているタイプといえるでしょう。
向いている業種・用途としては、小売業や卸売業における店舗への配送、工場間の部品輸送などが挙げられます。特に、パレット化された商品を効率的に配送するルート配送に適しているといえるでしょう。
また、精密機器や電子部品など、雨や衝撃から保護したいデリケートな貨物の輸送にも多く用いられます。多頻度で小口の配送を行う業務にも向いています。
バン型(箱型)
バン型は、荷室が完全に閉鎖された箱型の構造を持つトラックで、最も積荷を保護する性能に優れています。
特徴は、荷室が完全に密閉されているため、雨、風、埃はもちろんのこと、外部からの物理的な衝撃や温度変化の影響も受けにくい点です。これにより、荷物を最適な状態で輸送することが可能となります。
また、荷室内部が見えないため、防犯性に非常に優れており、高額商品や盗難リスクの高い貨物の輸送に適しています。積み下ろしは主に後部の観音開きドアから行いますが、一部には側面にドアを備えた車両もあります。荷室内の換気や温度管理のための設備を追加することも可能です。
向いている業種・用途としては、まず食品輸送が挙げられます。特に冷蔵・冷凍設備を備えた車両は、生鮮食品や冷凍食品の輸送に不可欠です。コンビニエンスストアやスーパーマーケットへのルート配送でも多く利用されています。
また、アパレル商品や医薬品、美術品など、デリケートな商品や高額商品の輸送にも適しています。悪天候が予想される地域や、長距離輸送で荷物を安全に運びたい場合にも強みを発揮します。
ダンプ型
ダンプ型は、油圧シリンダーの力を使って荷台を傾斜させ、積荷を一気に排出できる特殊なトラックです。主にバラ積みの貨物を運搬するために使用されます。
大きな特徴は、その荷台の傾斜機能です。運転席からのレバー操作一つで荷台を簡単に傾けられるため、積荷の排出作業を短時間で行えます。これにより、現場での作業効率を大幅に向上させることが可能です。荷台は、土砂や岩石などの重く固い積荷に耐えられるよう、非常に頑丈な構造で作られています。車体自体も耐久性に優れており、過酷な使用環境にも対応できる設計となっています。
向いている業種・用途としては、建設業界が代表的です。土砂、砂利、砕石、アスファルトなどの建設資材の運搬に不可欠な存在で、工事現場から発生した残土や、産業廃棄物の運搬にも広く利用されています。
また、農業分野においても、穀物や肥料、堆肥などの運搬に使用されることがあります。その他、鉱山や採石場など、大量の物質を効率的に運搬し排出する必要がある現場でも活躍します。
エンジン性能と燃費効率
10トントラックのエンジンは車両総重量が大きく、大量の荷物を運搬するため、非常に高いパワーとトルクが求められます。
エンジンの性能は、走行性能だけでなく、燃費効率や運転の快適性にも大きく影響するため、車両を選ぶ上で非常に重要なポイントとなります。
エンジンはディーゼルエンジンが主流であり、環境性能と燃費性能の向上が各メーカーで進められています。
エンジン性能と燃費効率を評価する際には、主な走行ルートや積載物の特性、年間の走行距離といった、自社の具体的な運用条件を考慮することが不可欠です。
例えば、山岳路や坂道の多いルートを頻繁に走行する場合は、低回転域から高いトルクを発揮するタイプのエンジンが適しています。これにより、積荷を積んだ状態でも力強くスムーズな発進や登坂が可能となります。
一方、平坦な道路での長距離走行が主体であれば、燃費性能に優れたエンジンを選ぶことで、燃料費のコストを抑えることが期待できます。
車両寸法と積載量の関係
10トントラックの車両寸法、特に全長や荷台長と最大積載量の関係を理解することは、物流効率や運用コストに直接影響するため非常に重要です。
これらの要素は、運べる荷物の量や種類、さらには通行可能なルートや作業スペースの制約に関わってきます。
一般的な10トントラック(最大積載量10トンクラス)の全長は、およそ9メートルから12メートル程度と幅があります。この全長の中で、荷台が占める長さは車両のタイプや架装によって異なりますが、標準的なものでは約6メートルから9メートル程度となります。車両の全長が長いほど、それに伴って荷台長も長くなる傾向があります。
荷台長が長いということは、一度に積める荷物の体積が増えることを意味し、嵩高な荷物や長尺物の運搬に有利となります。例えば、パイプや鋼材、建設用の部材など、長いものを運ぶ際には長い荷台が必要不可欠となります。
しかし、全長が長い車両にはメリットばかりではありません。車両が長いと、狭い交差点での右左折や、荷物の積み下ろしを行うターミナルや倉庫での取り回しが難しくなります。
また、都市部や特定の道路では、車両の全長に制限が設けられている場合があり、長い車両では進入できないエリアが発生する可能性もあります。
積載量を最大限に活かせる長い荷台を持つ車両を選ぶか、それとも多少積載量を犠牲にしてでも取り回しのしやすい短い車両を選ぶかは、主に走行するルートや荷積み・荷降ろしを行う場所の状況を考慮して慎重に判断する必要があります。
10トントラックの導入コスト
10トントラックの導入には、車両本体の購入費用だけでなく、初期費用やその後の維持・運用にかかる様々なコストが発生します。これらの費用を正確に把握し、長期的な視点で収支計画を立てることが、運送事業の安定経営には不可欠です。ここでは、10トントラックの導入にかかる主なコストについて詳しく見ていきます。
新車・中古車の価格相場
10トントラックの導入コストの中で最も大きな割合を占めるのが車両本体の価格です。ただし、新車で購入する場合と中古車で購入する場合では、価格相場が大きく異なります。
新車の10トントラックの価格は、車種、メーカー、荷台のタイプ(平ボディ、ウイング、バン、ダンプなど)、装備される機能(冷凍機能、パワーゲートなど)、エンジンの仕様などによって大きく変動します。
一般的な新車の価格帯は、シンプルな平ボディやバン型で1,000万円から2,000万円程度が目安となることが多いようです。ただし、特殊な架装を持つ車両や最新の安全装備、環境性能に優れた車両などは、さらに高額になる傾向があります。
一方、中古車の10トントラックの価格相場は、新車に比べて導入コストを抑えることが可能です。中古車の価格は、年式、走行距離、車両の状態、修復歴の有無、人気の車種かどうか、装備など、様々な要因によって決まります。
価格帯は非常に幅広く、数百万円で購入できる車両もあれば、高年式で状態の良いもの、特殊な装備が付いているものなどは1,000万円を超えることもあるでしょう。例えば、比較的走行距離が多い車両や年式の古い車両であれば、安価に入手できる可能性がありますが、人気の車種である日野のプロフィアや三菱ふそうのスーパーグレートなどは、中古市場でも比較的高い価格で取引される傾向があります。
中古車を選ぶメリットは初期投資を抑えられる点ですが、デメリットとしては新車に比べて保証期間が短かったり、購入後に予期せぬ修理費用が発生したりするリスクがあることです。購入する際は、車両の状態をしっかりと確認し、信頼できる販売店から購入することが重要です。
維持費と運用コスト
10トントラックは、導入後も様々な維持費と運用コストが発生します。事業で利益を確保するには、これらの継続的なコストを正確に把握し、運行計画に反映させることが大切です。主な維持費と運用コストについて見ていきましょう。
コストの種類 |
項目 |
費用目安(年間) |
備考 |
固定費 |
自動車税 |
約8万円前後 |
毎年支払い |
自動車重量税 |
約3.5万~4万円(※3) |
車検時(2年分で約7万~8万円) |
|
自賠責保険料 |
約5万円(※3) |
車検時(2年契約で約10万円) |
|
任意保険料 |
約30万~50万円(またはそれ以上) |
補償内容や保険会社による |
|
駐車場・車庫代 |
月額5万~10万円(地域による) |
年間約60万~120万円 |
|
変動費 |
燃料費 |
年間300万~500万円 |
燃費(3~5km/L)、軽油価格、走行距離による。年間走行約6万kmの場合 |
タイヤ交換費用 |
数十万円~ |
走行距離や積載量により変動 |
|
消耗品費用 |
数万円~ |
エンジンオイル、フィルターなど |
|
定期点検・車検費用 |
数十万円~ |
3ヶ月点検、年次車検など。整備内容による。 |
|
修理費用 |
不定(数万円~数百万円) |
故障内容による。突発的に発生する。 |
※3:上記の「費用目安(年間)」は、2年分を均等割りした概算です。実際は車検時にまとめて支払います。
また、車体が老朽化すれば、修理費用や部品交換費がかさむ傾向があります。さらに、エンジンやサスペンションは負荷が大きいため、定期的にメンテナンスを行い不測の故障を防ぎましょう。
これらの維持費と運用コストを正確に見積もり、運賃設定や運行計画に反映させることが、事業の収益性を確保するためには重要です。
10トントラックの運用と管理
10トントラックを安全かつ効率的に運用し、事業を安定させるためには、車両の日常的な点検から定期的なメンテナンス、そして運行に関わる法規制や必要な免許・資格の把握まで、多岐にわたる項目に注意を払う必要があります。
以下、10トントラックの運用と管理のポイントについて解説します。
必要な免許と資格
10トントラックを含む大型トラックを運転するためには、特定の免許と資格が必要となります。これは、車両のサイズや積載量が大きく、運転に高度な技術と知識が求められるためです。
まず、公道を走行するためには大型自動車免許が必須となります。
この免許を取得するためには、満19歳以上であり、かつ普通自動車免許、準中型自動車免許、中型自動車免許のいずれかを取得してから通算1年以上が経過していることが条件となります。
以前は「満21歳以上で、普通免許等の保有歴が通算3年以上」でしたが、2024年3月の法改正により、より若い年齢から取得できるようになったので、取得へのハードルは下がっています。
大型自動車免許の取得には、自動車教習所に通うか、運転免許試験場で直接試験を受ける方法があります。教習所に通う場合、費用や期間は教習所によって異なりますが、一般的には数十万円の費用と1ヶ月から数ヶ月の期間が必要となることが多いようです。大型車特有の車体感覚や内輪差、制動距離などを学ぶための教習が行われます。
また、積載する貨物によっては、運転免許以外に特別な資格が必要になる場合があります。例えば、危険物を運搬する場合には危険物取扱者免状(甲種・乙種・丙種)が必要となり、特定の種類の危険物を運ぶ際には、さらに講習の受講が必要になることもあります。
高圧ガスを運搬する場合は高圧ガス移動監視者の資格が、特定の化学薬品を運搬する場合は毒物劇物取扱責任者の資格が求められる場合もあるでしょう。
さらに、事業用としてトラックを運転し、お客様から運賃を得て貨物を輸送する場合、運転手は運行管理者試験に合格した上で、運行管理者資格者証の交付を受ける必要があります。
ただし、これは営業所ごとに配置が義務付けられている資格であり、全ての運転手が取得する必要はありません。しかし、安全運行に関する知識を深める上で、運転手自身が運行管理者資格を取得することは非常に有益です。
加えて、トラックドライバーとして働く上で、安全運転管理者や整備管理者といった資格も運送事業の運営においては重要になります。ただし、これらの資格も、主に事業所の責任者や整備担当者が取得する資格であり、全ての運転手が取得必須というわけではありません。自身の車両管理や安全運転意識向上のために、これらの知識を学ぶことは推奨されます。
定期点検と整備のポイント
10トントラックを安全かつ安定的に運行させるためには、日常的な点検と定期的な整備が非常に重要です。大型車両は部品にかかる負担も大きいため、適切なメンテナンスを怠ると、思わぬ故障や事故につながるリスクが高まります。
道路運送車両法により、事業用トラックには日常点検と定期点検整備が義務付けられています。日常点検は、運行前に運転手が行うもので、ブレーキの効き具合、タイヤの空気圧や亀裂の有無、灯火類(ヘッドライト、テールランプ、ウインカーなど)の点灯状況、エンジンオイルや冷却水の量などを確認します。
この日常点検で異常を発見した場合、速やかに整備担当者や専門業者に報告し、必要な処置を行うことが事故の未然防止につながります。
定期点検整備は、一定の期間ごとに行う詳細な点検です。
事業用トラックの場合、3ヶ月ごとに実施することが義務付けられています(一部例外あり)。この3ヶ月点検では、日常点検の項目に加え、エンジンルーム内の各部品の状態、ブレーキドラムやブレーキライニングの摩耗具合、サスペンションの状態、ステアリング機構、駆動系、排気ガス装置など、車両全体にわたる詳細な点検が行われます。
専門的な知識と技術が必要となるため、自社の整備工場で行うか、認証・指定整備工場に委託するのが一般的です。
さらに、車検も定期的に受ける必要があります。新車登録から初回は2年間、その後は1年ごとに車検を受ける必要があります。車検では、国の定める保安基準に適合しているかが厳しくチェックされます。
定期点検や車検で異常が見つかった場合は、速やかに部品交換や修理が必要です。
まとめ
10トントラックは、長距離大量輸送を支える主力車両であり、物流業界において重要な役割を担っています。
平ボディ、ウイング型、バン型、ダンプ型などの様々な荷台タイプがあり、運搬する荷物や業種に合わせた選択が重要です。導入時には、荷台タイプだけでなく、エンジン性能や燃費効率、車両寸法と積載量のバランスも考慮すべきポイントとなります。
新車価格は1,000万円~2,000万円を超えるものがあり、中古車は年式や状態によって数百万円から変動します。また、自動車税や重量税、保険料、燃料費、メンテナンス費などの維持費も事業計画に組み込む必要があります。
10トントラックの運転には大型自動車免許が必須で、安全運行のための定期点検と整備も欠かせません。適切な車両選択と管理を行うことで、10トントラックは物流効率向上と事業競争力強化に貢献する強力なパートナーとなるでしょう。